
【「覚せい剤とは知らなかった」では逃げられない-ヘルマンの概括的故意】
運び屋さんで「覚せい剤とは知らなかった。」などと言い訳をするのを、ニュースなどでよく聞きますが、刑事事件ではこれは通用しません。
ヘルマンの概括的故意 - 「種の認識」がなくても「類の認識」があれば、
故意ありとみなされます。
分かりやすくいうと、「覚せい剤という種」だと分かっていなくても、「コカインやヘロイン、覚せい剤などといった違法薬物の類」のたぐいの違法なものと認識していれば、概括的故意ありとみなされます。
ただし、被疑者または被告人の頭の中に「覚せい剤」という認識が全く無く、「これは絶対コカインだ」と信じて誤認していた場合、「覚せい剤取締法」ではなく「麻薬及び向精神薬取締法」が適用されます。
(参考)違法薬物系の取締法
①大麻取締法
②アヘン法
③毒物劇物取締法
④麻薬及び向精神薬取締法
⑤覚せい剤取締法
また、「全く違法なものとは知らなかった。」と類の認識を完全否定しても無駄です。
タイの「ヤーノーン-睡眠薬と思っていた」としらばっくれていた事件(千葉地方裁判所 平成8年(わ)907号 判決)
において、腹巻、靴などに隠して所持していたこと、報酬が高額であること、社会通念上睡眠薬としてはありえない粉末状であること、などから「被告人は麻薬であるとの未必的な認識があったと認められる。故意が認められるに十分である。」と、
懲役10年および罰金300万円の判決が言い渡されました。
学術研究機関 大判例法学研究所より